就労継続支援A型とは「援助付き雇用」「福祉的就労」のひとつで、一般の企業・公益法人で就職・就労することが困難な障害や難病を持つ人に障害者総合支援法を根拠として提供される障害福祉サービスです。
事業所は都道府県知事による指定制となっており、市町村により政令で定められた額の訓練等給付費が支給されます。
A型事業所は利用者と事業所で雇用契約が締結するため、各都道府県が定める最低賃金の給与が保証されるのが特徴です。
現在、日本では3781のA型事業所があり、約6.9万人が就労しています。※平成30年9月時点

ハイリ
簡単に言うと、障害を持ち、一般企業で働くことが困難な人が、最低賃金以上の時給を貰って働く福祉施設です。
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利用について
まずは就労継続支援A型の利用条件や利用する方法などについてまとめてみました。
利用条件
就労継続支援は誰でも利用できる福祉施設ではなく、利用するには以下の条件に当てはまる必要があります。
必ず満たす必要がある条件
- 障害または難病がある※1
- 年齢は原則として18歳以上65歳未満
※1:医師の診断書等で障害や難病があることが証明されれば、障害者手帳がなくても利用できます。
いずれかを満たす必要がある条件
- 就労経験があり、現在は就労していない
- 特別支援学校や就労移行支援で就職活動をしたが、就職できなかった
利用までの流れ
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事業所の選び
まずは通いたい事業所を探します。
市区町村の障害福祉窓口、ハローワーク、インターネットなどで情報収集をして、気になった事業所に見学にいきましょう。
ひとつ見るだけでは、事業所の合う・合わないがわかりにくいので、最低でも2~3箇所見学して、比較して決めるのが安心です。
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事業所の選考
A型事業所は雇用契約を結んで働くため、事業所の選考を受ける必要があります。
履歴書や面接などの選考をした結果、事業所の仕事内容や方針に適さないと判断された場合は不採用になることも。
一般企業での雇用であれば、採用になれば働き始められますが、就労継続支援A型の場合はサービス利用申し込みが必要です。
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サービス利用申し込み
通う事業所が決まれば、市町村の窓口で就労継続支援A型のサービス利用申し込みをします。
申し込む際には面談があり「サービス等利用計画案」が作成されます。
申し込みをすると1週間~2ヶ月ほどで受給者証が発行され、就労継続支援A型の利用が開始できます。
(発行にかかる日数は地域や申請時期によって大幅に異なります。)
お金の話
就労継続支援に通う人・通いたい人が知っておきたい、お金に関する話です。
お給料について
能力によって時給が数十円程度上乗せされることはありますが、最低賃金を大きく上回ることはほぼありません。
平均月収は7~8万円程度。※平成30年度のデータ
平成27年度の平均額は6.7万円、平成26年度の平均額は6.6万円だったので、A型事業所の給料の平均額は年々上がっています。
また、時給制なので「最低賃金が高い都市部で就労」「就労時間が長い」ほど、月収は上がっていきます。
社会保険について
日本では
- 週20時間勤務すると雇用保険に加入対象
- 週30時間以上勤務すると社会保険の加入対象
というルールがあります。
就労継続支援の場合もこのルールは同じ。
ほとんどの人は週20時間以上働くので、雇用保険の加入対象となります。
雇用保険に加入すると、毎月お給料から数百円天引きされますが、働けなくなったときに失業手当や育児休業手当などを受け取ることができます。
社会保険(健康保険、厚生年金)に加入すると、将来受け取る年金額を増やすことができます。
社会保険は差し引かれる金額が大きいため、加入しない方が良いケースも多く、事業所と相談して労働時間を調整することをおすすめします。
利用料について
就労継続支援A型は、働いてお給料を貰う場所ですが、福祉サービスなので利用料が必要です。
利用料は本人+配偶者の収入(住民税の所得割額)から算出されます。
ほとんどの人は0円、収入がある方でも9,300円で利用しています。
最大の上限額(37,200円)がかかるのは、グループホープホームを利用しており市町村民税課税世帯の人、前年度まで高収入で働いていた人や、高収入な配偶者がいる人のみです。
区分(住民税の所得割額) | 上限額 | 収入の目安 |
---|---|---|
【生活保護】生活保護受給世帯 【低所得】市町村民税非課税世帯 |
0円 | 年収が約100~200万円以下 |
【一般1】市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 | 年収が約600万円以下 |
【一般2】市町村民税課税世帯(所得割16万円以上) | 37,200円 | 年収が約600万円以上 |
生活費について
就労継続支援の平均月収は7~8万円程度なので、A型のお給料だけで安定して生活することは難しいです。
- 障害年金
- 家族の援助・同居
- 生活保護
などの方法を使い、生活している方がほとんどです。
>>就労継続支援A型・B型と生活保護は併用できる?減額・打ち切りの条件は?
時間と仕事内容
就労継続支援A型の働き方について解説します。
働く時間と日数
就労継続支援の利用は基本的に、週20時間以上の労働になります。
ほとんどの事業所が、週4~6日、1日4~6時間で運営しています。
週5日勤務なら1日4時間以上、週4日勤務なら1日5時間以上が目安です。
通い始めで短時間から慣れたい人、体調の都合で一時的に長時間の労働を控えたい人などは、事業所に相談すると認められる場合があります。
(週20時間未満でも利用はできますが、短時間利用者が多いと事業所が受け取れる訓練等給付費が減額されるので、常に週20時間未満で利用するのは嫌がられます。)
また、週30時間以上の労働ができる就労継続支援A型の事業所は少なく、あったとしても、それなりに高いレベルの労働が求められます。
利用期間の制限
就労継続支援A型に利用期間の制限はなく、何年でも利用することができます。
ただし、雇用契約に期間が定められている場合は、契約の更新がなければ同じ利用所を継続して利用することはできません。
また、年齢が65歳を超えると原則として利用できません。
仕事内容
就労継続支援A型で行える仕事は、以下のようなものが挙げられます。
- 軽作業(内職)
- 製品制作
- 食品製造
- 小物の解体作業
- 農業
- 飲食店スタッフ
- 清掃業務
- 通販の発送
- オークション出品代行
- ライティング
- データ入力
事業所によって取り扱っている仕事内容は異なるので、希望する仕事がある場合は、その仕事に対応した事業所を探しましょう。
よくある疑問
就労継続支援A型に関する、よくある疑問を解説します。
他の福祉サービスと併用はできる?
- 他の就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労移行支援
などの就労系の福祉サービスと就労継続支援A型の併用は基本的にできません。
A型を利用しているというのは、雇用契約を結ぶ労働をしているため、他の就労系福祉サービスを利用する必要性が極めて低いと判断されます。
ただし、デイケア等の就労面以外の福祉サービスとの併用は認められる可能性もあります。
また、就労継続支援A型を利用しながら、一般就労をすることも、基本的に認められません。(就職活動のためのインターン等を除く)
就労継続支援B型との違い
A型とB型の大きな違いは「雇用契約を結ぶかどうか」です。
A型は雇用契約を結んで働くため、都道府県の最低賃金以上の時給を受け取ることができます。
ただし雇用契約を結んだ労働なので配慮を受けつつもある程度ちゃんと働くことが要求されます。
B型は雇用契約を結ばずに働くため、最低賃金は保証されず、通った日数・時間・作業内容に応じて工賃が支給されます。
B型の工賃はA型の給料より安くなりますが、A型よりも気楽に自分のペースで働くことができます。
>>就労継続支援A型事業所と就労継続支援B型事業所の違いを比較
就労移行支援との違い
就労移行支援は一般企業に就職を目指す人が、訓練や就職活動の援助を受ける場所です。
雇用契約を結んで働くA型とは異なり、お給料は貰えません。
簡単に説明すると「A型はお給料を貰って福祉的就労をする場所」「就労移行支援は一般企業で働くための準備をする場所」です。
金銭面で助かるのはA型ですが、就職のサポート力は就労移行支援の方が圧倒的に高いので「すぐに一般企業への就職(障害者雇用)」を考えている人は、就労移行支援に行ったほうが良いです。
作業所・授産所との違い
作業所・授産所というのは昔の言い方です。
2005年に設立された障害者自立支援法により「就労継続支援」が作られ、作業所・授産所という呼び方はしなくなりました。