この記事では就労継続支援B型について知っておきたいことを、1記事でまとめて解説しています。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型は、障害や難病を持ち、雇用契約を結んで働くことが難しい方が利用する障害福祉サービスです。
以前は「作業所」「授産所」などと呼ばれていましたが、2013年の法改正で『就労継続支援B型』という呼び名になりました。
一般就労やA型とは異なり、雇用契約を結んだ労働ではないので、作業した分のお金(工賃)を受け取りながら、自分の体調に合わせて無理なく働くことができます。
- 就労が難しい人の、日中の活動の場
- 就労が難しい人が、簡単な仕事をして工賃を受け取る場
- 就労を目指す人のための訓練の場
- 生活リズムを整えるための訓練やリハビリの場
として、全国で約26万人が利用しています。
就労継続支援B型の対象者・利用条件
B型は、障害者手帳を持っている人なら誰でも利用できるわけではなく、下記のいずれかに当てはまる必要があります。
- 50歳に達している
- 障害基礎年金1級受給者
- 就労経験があるが、年齢や体力・精神面などの理由で今は一般就労が難しい
- 就労移行支援を利用したが、就職することができなかった
- 就労移行支援事業者などによるアセスメントで、就労面での課題が把握されている
上のリストだけ見るとややこしい条件があるように思えますが、就労継続支援のB型の利用が必要な方であれば、いずれかに当てはまって利用できるケースが多い。
学校を卒業後に一度も就労経験がない方は、まず就労移行支援に行き、一般就労を目指してみる方針なようですね。
64歳までの制限があるA型とは異なり、年齢制限(上限)はないので、65歳以上でも利用することが可能です。
利用期間の制限もないので、就労が難しければ長期的に利用し続けることもできます。
また、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断により就労が難しいと判断されれば利用することができます。
どんなことをするの?
就労継続支援B型での作業の例です。
- 農作業
- シール貼り
- 袋詰め
- 箱の組み立て
- ボールペン等の部品組み立て
- 裁縫
- クリーニング
- データ入力
- 調理
- 清掃
ほとんどの事業所では、説明を受ければ簡単にできるような軽作業がメイン。
一部の事業所では多少のスキルが必要な作業で、高めの工賃が貰えるところもあります。
1日の流れとしては、お昼休憩を挟んで10~15時ぐらいの開所時間が一般的。
朝礼や終礼・休憩などの時間を除き、実際に作業するのは1日3~4時間程度。
体調に合わせて2時間程度の短時間や、週1~2回から利用できる事業所が多いです。
作業以外にも、レクリエーションや季節ごとのイベントなど『自立や一般就労に向けた訓練』や『お楽しみ』が企画されることもあります。
貰えるお金(工賃)
平成30年度のデータで、平均工賃月額は16118円、1時間あたり214円です。
事業所や作業時間、作業内容によって差はありますが、月1~2万円が目安です。
工賃の決定方法は事業所によって異なり
- 1日または時間あたりの金額が設定されている
- 評価に応じて1日または時間あたりの金額が設定されている
- 作業量に応じて決定される
など様々です。
最低金額の保証はないので、安定して通っても1万円に満たないケースもあります。
まれに月5万円以上の工賃が出るようなB型もありますが、工賃分の売上を出すために作業内容がけっこう大変だったりします。
B型で毎月5万以上安定して稼げるのであれば、A型や一般就労をした方が良いんじゃないかなと思います。
また、工賃が高めのB型に行ったとしても、自身の収入だけで自立した生活を送るのは難しい金額。
障害年金、生活保護、家族の援助などと合わせて生活するケースがほとんどです。
かかるお金(利用料やその他のお金)
区分(住民税の所得割額) | 上限額 | 収入の目安 |
---|---|---|
【生活保護】生活保護受給世帯 【低所得】市町村民税非課税世帯 |
0円 | 年収が約100~200万円以下 |
【一般1】市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 | 年収が約600万円以下 |
【一般2】市町村民税課税世帯(所得割16万円以上) | 37,200円 | 年収が約600万円以上 |
就労継続支援B型を利用する人は、『実際にかかった利用料の1割』または『所得に応じた上限額』の安い方を支払います。
「働きに行ってるのにお金を取られるなんて・・・」と思っちゃいますが、利用料は施設の運営費や管理者・支援員などのお給料に充てられます。
実際のところ、9割以上の方は【生活保護】【低所得】に該当し、無料で利用しています。
残りの1割もほとんどの人は【一般1】に該当し、自己負担額は月9300円。工賃から差し引きで考えても、収支がマイナスになることは少ないです。
【一般2】に該当するのは、前年度の年収が約600万以上ある人のみ。前年度にそこそこ稼いでいた人や配偶者の収入がある人は対象となりますが【一般2】に該当する利用者さんは滅多にいないようです。
その他のお金としては、食事代・交通費などの諸経費は自己負担になる場合があります。
利用までの流れ
精神障害や内部障害・難病などで定期的に通院している方は、まず主治医に相談して通所の許可をとっておきましょう。
B型を利用することが決まれば、まずは利用する施設探しをします。
自分でインターネットで探しても良いし、医療機関のソーシャルワーカーや市町村の障害福祉課でも地域にあるB型事業所を教えてもらうこともできます。
当サイト(障害者雇用の教科書)でも就労継続支援B型が検索可能です。
通いたい・気になる事業所が見つかれば、まずは見学や面談に行きましょう。
事業所によって方針・作業内容は違うので、何箇所か見ておいた方が安心ですね。
1日~1週間ほど体験利用ができる事業所も多いです。
事業所が決まれば、市町村の窓口で手続きと聞き取り調査をして、認定されれば『障害福祉サービス利用受給者証』が発行されます。
聞き取り調査は、市町村の調査員から生活状況などを聞かれるもの。
就労支援が本当に必要な方であれば、聞き取り調査により利用不可になるケースはほぼないので、面接だと思って緊張せず、普通に話していればOKです。
手続きに関しては、通う事業所の職員が手伝ってくれることがほとんどなので、特に難しいことはありません。
辞めたいときは?
雇用関係はないので、法的には「今日で辞めます」でも問題ありません。
実際のところは、事業所側で2週間~1ヶ月ほど前からの告知をお願いしているところが多いです。
疑問を解決
Q
毎日行ったり、長時間働けなくても大丈夫?
A
事業所によっては、週1日や、1回2時間程度から通えるところもあります。一方で週5日・1日5時間程度が原則のところもあるので、施設選びの時点で確認しておきましょう。
Q
クビになることはある?
A
B型作業所の場合、雇用契約を結んでいないので、そもそも「クビ」という言葉は使いません。
言うとすれば「利用終了」ですね。
基本的に事業所から利用者を辞めさせるメリットはありません。
よほど周りの利用者に迷惑をかけている、籍を置いているだけでほぼ来ないとかじゃない限り、事業所側から辞めさせられる心配はありません。[/st-cmemo]
Q
有給休暇は取れる?
A
B型は雇用契約がないため、有給休暇がありません。休みたいときはほぼ自由に休めますが、休んだ日の工賃はゼロになります。事業所によっては独自に有給休暇制度を作っているところはあります。
Q
A型と比べたメリット・デメリットは?
A
B型のデメリットは貰えるお金の少なさです。A型では都道府県の最低賃金が保証されるため、安定して通えば月10万弱程度のお金を受け取ることができますが、B型では保証がないため月1万円以下の方もいます。
B型のメリットは、働く上での負担が少ないことです。A型は雇用契約を結ぶため、最低でも週20時間程度、時給が発生するので時間中はしっかり作業をこなすことが求められます。B型は事業所にもよりますがA型よりは自由で、自分のペースで負担なく作業していくことができます。
Q
受け入れ拒否されることはある?
A
原則として、「正当な理由がなく、施設障害福祉サービスの提供を拒んではならない。」という決まりがあり、基本的に受け入れ拒否はできません。
ただし
- 施設の対象外となっている障害を持っている
- 設備や医療的な事情で受け入れることが難しい
- 危険な行為をする可能性があり、対応できない
- 用意している作業をこなすことが難しい
などの理由で、受け入れを拒否することは法律的に可能です。
実際のところ、受け入れ拒否となるのはかなりレアケース。1箇所がダメでも、2~3箇所あたってみれば見つかることが多いです。
Q
就労支援支援や、就労継続支A型とどう違うの?
A
利用の目的や対象となる人が違います。詳しくは以下の表にまとめています
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|---|
目的 | 訓練 | 就労・訓練 | 就労・訓練 |
対象者 | 一般就労を目指す人 | 一般就労は難しいが、ある程度安定して働ける人 | 安定して長時間働くことが難しい人 |
年齢制限 | 65歳未満 | 65歳未満 | 制限なし |
給料・工賃 | 原則なし | 給料あり (平均月7~8万) | 工賃あり (平均月1~2万) |
雇用契約 | なし | あり | なし |
利用期間の上限 | 2年 | 制限なし | 制限なし |
施設数 | 約3500 | 約3800 | 約12000 |
利用者数 | 約3.4万人 | 約7万人 | 約26万人 |
もっとざっくり説明すると
- 就労移行支援:2年以内に一般就労を目指す人が、訓練や就職活動をするために通う、学校のような場所
- 就労継続支援A型:ある程度安定して働けるが、一般就労は難しい人が働く場所(都道府県の最低賃金以上の時給が貰える)
- 就労継続支援B型:安定して働くことが難しい人が自分のペースで無理なく働く場所(作業に応じて工賃が貰える※最低賃金保証なし)
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