気分障害の一種であるうつ病を持つ方の就職・転職についてまとめてみました。
うつ病の方に向いている・出来るおすすめの仕事は?
うつ病の場合、身体・発達・知的障害のように「こんな仕事が得意」「こんな仕事が苦手」といった傾向はありません。
つまり技能面で向いている仕事は、個人差が大きいです。
なので、今回はうつ病を持つ方が負担なく働きやすい仕事という点で考えていきます。
うつ病の人に向いている仕事は、ストレスや負担の少ない仕事です。
給料や雇用条件が良くても、総合職や営業などのキャリア職と呼ばれる仕事は、業務上のストレスや責任、残業なども多いので、うつ病の症状が悪化する原因になりかねません。
うつ病の方に向いている、ストレスや負担の少ない仕事は次のような業種になります。
事務職
データ入力、書類整理、メール対応、電話対応 などの社内で発生する雑務を担当する仕事です。
負担が少なく働きやすいので、障害者雇用では求人数も応募者も多く、働いている人が多い職種です。
うつ病は真面目な方が多いので、コツコツ作業する事務職では評価されやすい傾向にあります。
ただし職場によって、集中して自分の仕事をこなせば良いところ、コミュニケーションを多く必要とするところがあります。
社内での密なコミュニケーションが必要となる場合、負担に感じることもあるので注意しましょう。
また、業種によっては繁忙期に忙しくなり、残業や休日出勤が発生する場合もあるので、事前によく確認しておきましょう。
○○補助などのアシスタント業務
事務補助、経理補助、営業補助などそれぞれの部署で、簡単なアシスタント業務を行う仕事です。
仕事内容は事務職に近く、社内・部署内で発生する雑務を担当します。
一般社員と比べて、仕事内容が簡単で、負担が少なくなっているケースが多いです。
ただし他の社員から細かく指示を受けて業務をこなすため、人とのコミュニケーションは多くなりがちです。
清掃
社内や施設内の設備を掃除する仕事です。
個人でコツコツ作業をこなす時間が長く、人とのコミュニケーションが少ないので、うつ病の人でも負担やストレスなく働きやすい仕事です。
倉庫作業・製造
倉庫内で商品の管理・発送、工場内で商品の製造などを行う仕事です。
淡々と作業をこなすことが多く、コミュニケーションは少ないです。
職場によっては体力や筋力を必要としたり、繁忙期に忙しくなることもあるので、事前に確認しておきましょう。
仕事が原因で発症した人は前と同じ業種は慎重に
うつ病が発症した原因が、家庭や恋愛など仕事以外の場合は、前職の経験を活かして就活をすると、有利に就職できます。
しかし、仕事が原因でうつ病になった方は、前職と同じ業界で働くことには慎重になった方が良いです。
「たまたま前の職場が合わなかっただけ」という考え方もありますが、次の仕事が絶対に大丈夫な保証もありませんし、症状が悪化する原因になりかねません。
どうしても前職の経験を活かしたいのであれば、転職エージェントや就労移行支援、支援機関などを利用し、じっくり相談して考えましょう。
例えば「激務が原因で~」という方なら、残業や持ち帰りの仕事がない条件で探せば同じ業界でも上手く働いていける可能性もあります。
とにかく長時間労働は避けて!
うつ病の方が働くとき、いちばん怖いリスクは、働きすぎによるストレスでうつの症状が悪化することです。
どんな職種を選ぶときでも「残業が少ないこと」「休日数がきちんと確保されていること」は最重視してください。
人によってはフルタイム(8時間)ではなく、1日6時間・週30時間程度の短時間勤務で探したほうが良いかもしれません。
また、生活リズムの乱れを起こさないことを考えると、シフト制よりも、勤務時間が毎日固定されている仕事のほうが安定して働きやすいです。
どんな配慮が必要?
まずは負担なく働くことを重視し、業務量や残業など、仕事の負担に対する配慮を交渉しましょう。
人によっては「朝どうしても起きられない」「通勤ラッシュの電車に乗れない」「8時間働くのは負担が大きい」といった、時間的な配慮が必要になる場合もあります。
短時間勤務やフレックスタイム制、勤務時間、休暇、通院休暇については、面接の段階でしっかり交渉しておきましょう。
会社によっては、月1回程度であれば、体調が優れない場合、当日に休みを取ることを配慮してもらえる可能性があります。
体力が必要な業務、コミュニケーションが必要な業務などに関する調整も、必要に応じて行っていきましょう。
コミュニケーションについては一般社員との兼ね合いもあるので、大きな配慮を受けるのは難しいことが多いです。
「コミュニケーションを取るのが少し苦手だけど悪く思わないでね」というのを伝えておく程度のことは可能です。
面接で聞かれること、伝えるべきこと
「体調は安定していますか?」「休まず毎日ちゃんと出勤出来ますか?」といった体調や出勤のペースについて質問されることが多いです。
理想としては「休まずちゃんと働けます」と答えることですが、採用後に体調が優れない日に欠勤になるとトラブルになりがち。
まれに欠勤する可能性がある程度なら正直に伝え、突然の欠勤による被害が少ない職場であれば、配慮として受け入れてもらえる可能性もあります。
時短勤務が必要な場合は、面接の段階で自分が無理せず働ける勤務時間をしっかり交渉しておきましょう。
また「体調は安定しています!休まず出勤できます!心配いりません!」と伝えると、「自分の状態について理解できていないのでは?」と思われることも。
本当に体調が安定している場合でも、通院や服薬の状況、いままでの体調の変化について話しておいた方が信頼感が生まれます。
うつ病の仕事探しのやり方
うつ病の方におすすめの仕事探しのやり方は『転職エージェント』または『就労移行支援』です。
症状が安定していて、すぐに働ける状態の場合は『転職エージェント』がおすすめ。
転職エージェントは『働きたい障害者』と『障害者を雇用したい企業』をマッチングさせるサービスで、求職者は無料で利用できます。
希望条件にあった求人の紹介だけではなく、職業選びのカウンセリング、履歴書や面接の練習、企業との条件交渉の仲介なども代行してくれます。
ハローワークや自分で就職活動をするのに比べて、手厚いサービスが受けられます。
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「働きたいけど、すぐに働くことに不安がある」という人は『就労移行支援』がおすすめ。
障害を持つ方が通う学校のようなところで、働く上で必要なスキルのトレーニングや、就職活動の支援が受けられます。
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うつ病の就労移行支援の利用ってどうなの?
うつ病を持ち、一般企業で働くために就労移行支援を利用している人は非常に多く、利用者の2~3割がうつ病・躁うつ病を持っている事業所も。
2015年4月の障害者職業総合センターのデータによると、ハローワークから就職した精神障害者の定着率が34.6%なのに対し、就労移行支援と就労定着支援を受けた精神障害者の定着率は82.3%という結果が出ています。
就労移行支援と言えば、軽作業などの実技トレーニングを受ける場所のイメージがありますが、うつ病の方の場合は
- コミュニケーション、対人スキル
- 体調管理
- ストレスマネジメント
- 障害説明
などのメンタル面のトレーニングがしっかり受けられる就労移行支援を探すことをおすすめします。
おすすめの就労移行支援を探す:障害者向け就労移行支援サービスまとめ
うつ専門の就労移行支援:シゴトライ
うつ病だと障害者雇用でも就職に不利って本当?
平成30年の3月までは、企業が障害者の法定雇用率を満たす対象となるのは『身体障害者』と『知的障害者』のみで、うつ病である『精神障害者』は対象になりませんでした。
つまり、企業側にとって、精神障害の方を雇うメリットがない状態だったのです。
平成30年の4月からは精神障害者も身体・知的障害の方と同じように法定雇用率のカウント対象になりました。
さらに短時間雇用の場合は精神障害者の方が優遇される措置もあるので、現在はうつ病(精神障害)だから就職に明らかに不利ということは少ないです。
障害等級ごとの就職について。3級は就職しやすい
うつ病の障害等級ごとの就職についてです。
1級は働くのは難しい
うつ病の場合、1級の障害者手帳を持っている人は障害者雇用で就職することは難しいでしょう。
本人が大丈夫だと思っていても、企業側としは雇いにくい相手になってしまいます。
また、1級の方が働けていると、症状が改善しているとみなされ、障害等級が下がり、障害年金などの受給額が減額されるケースも。
2級は負担の少ない仕事なら可
2級の方は、配慮を受けながら働いている方はいます。
フルタイム正社員は難しいので、週20時間の負担の少ないアルバイト程度の方がほとんどです。
3級はしっかり働ける人も
3級の方は、うつ病を持ちながらフルタイム勤務をこなしている方もいます。
働いても症状が悪化せず、安定して出勤できる状態なら、しっかり働いても大丈夫でしょう。
企業側に自分の状態がきちんと説明できるのであれば、正社員や契約社員で好条件なお仕事でも受かる可能性があります。
ただし働き始めた時点で「もう大丈夫」と思い込まず、定期的な医療機関の受診や、支援機関などを利用し、しっかり自分の状態を向き合っていきましょう。
うつ病を隠して、クローズで就職することはできる?
うつ病は目に見えない障害なので、手帳を持っていることを隠し(クローズで)就職することは可能です。
面接時に障害を告知する義務はないので、言わなくても法的には問題ありません。
ただし、何かしらのストレスから症状が悪化し、働くことも難しい状態になる危険性もあるので、おすすめはしません。
障害者雇用を使わずに就職するということは、配慮を一切受けず、障害を持たない人と同じように働くということです。
残業や休日出勤などの激務や、人間関係の悩みが発生する確率は、障害者雇用を利用するよりも圧倒的に高くなります。
ストレスを受け、症状が重くなってしまったものを回復させるのはとても難しいので、障害者雇用で無理なく働く方が安心です。
手帳を持っていないと障害者雇用は使えない
障害者雇用率算定対象となる(=障害者雇用として雇われる)には、『障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)』を持っていることが必須条件です。
うつ病の診断を受けていても、手帳を持っていなければ障害者雇用で働くことは出来ません。
うつ病を抱えながら障害者雇用として働きたい場合は、まずは『精神障害者保健福祉手帳』の取得を目指しましょう。
手帳を持っていない方でも医師の診断書があれば、障害者トライアル雇用などの支援は受けられる可能性があります。
うつになったら転職してはいけないって本当?
「うつになったら、生活を大きく変えないように、転職はしてはいけない」という話をする人がいます。
うつになった原因が仕事ではなく、今の仕事がストレスになっていないようなら、今の仕事を続けた方が良いパターンもあります。
ただし、仕事が原因でうつになった場合は、早く転職してしまう方が良いです。
いまの会社でどうにかしようとしても、何も改善されない場合がほとんどですし、無理して働くことでうつの症状が悪化するケースもあります。
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